君に染まる(前編)
あれが、ディープキス…。
キス自体初めてじゃない…
っていうか、初めては獅堂先輩だけど…。
あんなに長くて、息が出来なくて、
苦しいキス…。
好きでもない人にされたら
嫌なはずなのに、
あまり嫌じゃなかった…。
それどころか…すごくドキドキした。
あたし…
先輩のこと、好きになりかけてる…?
「もう1回聞くけど…本当にいいの?
Ⅲ類に怒鳴りこまなくて」
上靴に手をのばすあたしの顔を覗き込み、さっきから同じ事を
そう聞いてくる楓ちゃん。
「いいの。楓ちゃんしつこい」
そう言って乱暴に靴をはいた。
「本当に本当?」
「本当!」
「うーん…なんか不完全燃焼…」
不満そうな顔でかばんを肩にかけ直した。
心配してくれるのは嬉しいけど
迷惑かけられないもんね…。
それに、獅堂先輩が
どうにかしてくれるみたいだったし、
気にしないでいるのが一番だよね。