君に染まる(前編)


そう自分に言い聞かせた。



「…あ。
楓ちゃん、ちょっと待っててくれる?」



先に校舎を出た楓ちゃんが
振り返り首をかしげた。



「委員会の仕事で
講堂にファイル届けなくちゃいけないの。
すぐ戻ってくるから」



「え~今日バイト~」



「届けるだけだから、絶対待っててね!」



頬をふくらませる楓ちゃんに
遠ざかりながら何度も念を押す。



ようやく納得してくれたのか
声が聞こえないくらい遠くなった時、
楓ちゃんは校舎を出たところにある
小さな階段に座り込んだ。



それを確認したあたしは
前を向いて講堂に向かう。










講堂を入ってすぐにある資料室。



そこの指定された場所にファイルを置き、
部屋を出ようとした瞬間、



「こんにちわ」



誰かに入り口をふさがれた。



「この間はどうも」



そう言って笑うのは、
この間あたしを
講堂裏に連れて行った先輩達。


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