君に染まる(前編)


「な、なんですか?離し…」



抵抗していたあたしは目にうつった物に
言葉を失った。



先輩が手に握るカッターナイフ。



「あなたのせいで
獅堂くんはファンに冷たくなった…」



チッチッと嫌な音を立てながら
カッターの刃が出てくる。



「ファンには平等。
特定の彼女は作らない、作る気もない。
そんな獅堂くんが
まさかあなたみたいな子を…」



「どうやってたぶらかしたかは
知らないけど、
何も知らないあなたみたいな子に
創吾様が奪われるなんて絶対許せない」



「あたし、たぶらかしてなんか…」



「創吾くんはみんなのものなの!
誰か1人のものになんて
なっちゃいけない!」



何それ…。



「…そんなのおかしいです」



「は?」



「獅堂先輩はものじゃありません…
みんなのものとか…
1人のものになっちゃいけないとか…
そんなの他人が決めるなんておかしい…」



「うるさい!!」



声をあげた先輩が
あたしの頬に顔を当てた。



「あなたなんかには分からない。
ファンの子達が
どんな思いで獅堂くんを見ているのか…」


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