タレントアビリティ
「ぬがらああああああっ!!」

 今日は歌姫が奏でるメロディーがおかしかった。そんな噂が流れるであろうメロディーを。いや、雄叫びを。添は奏でた。

「あんの才能だけのカタマリめ……!」

 能恵さん。
 これは、ひどい。

「いや、昼ご飯は旨かったけど、ナニコレ……」

 能恵が渡してくれたタッパーの中にはクレープが入っていた。ツナマヨクレープとハンバーグクレープと鶏の唐揚げクレープの3つ。がっつりと食べてほしいのか、胃もたれ翌日にはしんどいメニューだった。
 それでも添は美味しく平らげた。思いの外あっさり食べられて、なんだデザートもあるんだとその中身を開けたらクレープ。

 味はもちろん、納豆キムチクレープ。フタを開けた瞬間鼻に触れたフレーバーで、止めた。

「いや、納豆とキムチは旨いよ。でも、クレープは……」

 アウト。
 うんうんと頷いてからタッパーに1つ残して収納して、いつも通りに屋上から立ち去ろうかとしたとき、屋上の鉄の扉が開いた。誰かが来たということ。

「添さん?」
「あ、風音さん」

 クレープを押し付ける相手がのこのこ現れてくれた。そんな添の内心を知らない能恵はそのまま添の近くに歩み寄り、背中でフェンスにもたれて並ぶ。
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