タレントアビリティ
「一般ユーザー、だよな」

 いつものアパート。添は言われた通りにパソコンを開いて待っていた。時刻は1時少し前。お昼恒例のあの番組が、添に見られずとも点いている。
 真っ白なデスクトップに変化は無い。メロンパンを牛乳で流し込みながら、サボった学校の事を思い出した。

「忌引って何日有効だっけ?」

 生徒手帳をめくると、長くとも短くともない忌引期間が記されていた。3日間の降って来た休みの、添の計画は真っ白。

「暇なのか、要するに」

 3日間ぷよぷよでもしておこうかと思った矢先に、携帯電話が震えた。案の定そこに表示されていた番号は能恵のもの。国際電話の電話代は、馬鹿にならない。

『やっほー。準備した?』
「デスクトップのままですけど、パソコンは立ち上げました」
『あいよー。ん、じゃあ、デスクトップにある白い花のアイコン。それダブルクリック』
「……何のプログラム?」
『私お手製の、遠距離パワーポイント』
「了解っす」

 言われた通りにダブルクリックすると、さっさとプログラムが起動した。大量のソフトがインストールされているというのに、このパソコンはサクサク動く。
 やがて準備の出来た画面には、シンプルな白い画面が表示されていた。そこに書かれている文字に苦笑する。

「拍律風音の全て、って……」
『そのまんまだよ? じゃ、説明しながらやるから、聞きながら見ててね』
「あの、電話代は……」
『電話会社に圧力掛かってるから、細かい事はいいの』

 細かくない。
 しかし能恵はそれを放置したままに解説を始めた。画面が切り替わり、とあるステージが映し出される。
 ピアノの鍵盤を叩く、やや幼い金髪の少女の写真だった。これが誰かだなんて、言う必要性は無い。
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