タレントアビリティ
「部屋には俺だけですから」
『んー、よろしい。そえもそーいうとこ、分かってきたね?』
「嫌でも分かる……」
『だよね。あ、えっと、風音ちゃんと両親の関係だけど。ストレートに言っちゃえば、親子っていうより師弟、かな?』

 突然始まった話に、添は息を飲み込んだ。何やら随分シリアスな事になりそうだと腹を固め、電話の声に耳を傾ける。

『才能がある人にお子さんがいるのなら、その才能を伝授したいって思うのは当然のものなのよね。親には受け継がせるだけの才能もあるし、拍律の家なら設備もある。で、当然のように、娘に音楽を叩き込んだ』
「ああ、ね。だから親子より師弟だ、と」
『普通の家の教育ママなら、まだまだ親子って言える。ご飯食べさせたりいろいろあるから、日常的な部分で接するでしょ? でも拍律の家は違うの。お父さんもお母さんも大忙しで、なかなかそんな世話が出来なかった』
「……愛を貰ってない」
『両親と直接関わる機会は音楽の練習の時だけだからね。炊事洗濯とかは全部、お手伝いさんがやってたの』

 いわゆるお嬢様、と漏らした能恵の言葉を添は納得しようと噛み締めていた。フィクションの世界でしか知る事のないような、そんなお嬢様だったなんてやっぱり信じられない。
 それに何より、添と能恵の住む町に、そんな豪勢なお屋敷は無い。では、風音がどこに住んでいるんだろう。
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