タレントアビリティ
 授業中の廊下や階段をさっさと通り抜け、無機質な屋上の扉の前に添は立った。何故か心音が高鳴るのだが、原因なんて分からない。
 冷たい色のドアノブを回すと、扉は無抵抗に開いた。少し曇った午後の空の下で、拍律風音はそこにいる。金の髪を風に流しながらフェンスにもたれて、突然の来訪者に目を丸くしていた。

「…………添さん、どうしてここに?」
「姉貴がキトクな状態になってたから、その奇特な姉貴と話して帰って来た」

 間違いは無い。真っ白な姉さんは、確かに奇特な才能を持っている。

「風音さんは?」
「えっ、と」
「授業サボり? よかったね俺がいなくて」
「……ですね。私は気まずいの、苦手ですから」
「ふーん。でもあいにく俺も今日はサボりだから、1人で黄昏れる時間は終わり」

 コンクリートの屋上を歩いて、風音の隣にもたれて座る。意外な行動に風音は驚いていたようだがすぐに風音も腰を折って座った。2人して眺める曇り空。

「何の用、ですか?」
「別に何も。サボろうって思ったら風音さんがいたから、暇はしないかなって思って」
「それは私が、あなたの無駄話に付き合えばの話です。私はそんなつもり、さらさらありませんから」

 さっさと立ち上がり扉へと歩いていく風音。ドアノブを回そうとしたところで、がっちりロックされている事に気付いた。
 澄んだ瞳で添を睨み、そしてやや強い口調で言う。座る添からしてみれば、スカートの中が見えるような見えないような。

「どういうつもりですか!?」
「別に……。教師がもし登って来た時に無抵抗に開いたらまずいから、ロックするのは普通だって。それに風音さん、今日は欠席するつもりだったでしょ?」
「そうですけど、あなたと話すつもりはありません」
「何で嫌われたんだろ」
「嫌いなものは嫌いです」
「あっそ。まあとにかく、授業サボったら確実に親に連絡飛ぶから、それを覚悟して教室に行きなよ?」
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