タレントアビリティ
「よーっ、むーなしろっ!」
「……またお前か」
「どーせ能恵さんいないんだろ? 居場所の無い俺に、寝床と食事と風呂とぷよぷよを提供するのがお前さんの役目だぜ?」
「そーですか」

 能恵の電話が切れた後、やることが無いとして眠っていたところにやって来たのが、昨日と同じ人間だった。タイミング良く訪れる万は本日着替え持参。泊まる気満々らしい。
 いそいそとプレステを立ち上げる万を尻目に冷蔵庫を覗く。食べ物が入っているはずのタッパーに、ぺらりと1万円札が貼り付けてあった。ひんやり冷たいし心も冷たい。

「万」
「あー?」
「悪いけどメシが無い。コンビニか外食かの二択だけど、異義あるか?」
「外食で。ファミレスでがっつりいこうぜ」
「……お前な、ここに日本国最高の価値を誇る素晴らしいお札があるというのに」

 キンキンに冷えた1万円札をぱしっと見せてニヤリと言ってやった。万の目付きがあからさまに変わる。コントローラーを投げ捨てた。

「ファミレスでがっつり? 寿岳万、何を言っている?」
「ヒャッハーッ! さあ何があるここら近辺? 和食洋食和食和食和食!!」

 ちなみに万は和食好き。

「京料理のフルコースッ!」
「あのな、学生2人で入れるようなところにしてくれよ。金権は今俺にあるんだからな?」
「イエッサー!」

 さっさと電源を落として玄関まで瞬間移動していた添の声が、玄関から響いて来た。1万円札をポケットに部屋を出る。風音の事はやはり、能恵に任せてみようかと思った。
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