タレントアビリティ
「バイオリン投げ捨て事件、ってのが起こったんだけどよ」
「犯人? 俺だけど」
「だよなー。お前くらいだもんな、あんな過激な事やらかすのはさ。ってか歌姫が屋上か……。珍しいな、そりゃ」
「昨日何かあってたみたいで、黄昏れてたらしいよ」
「サボりか。ったくさ、お前受験まで1年半しかないんだからそろそろ意識すれば?」
「お前には言われたくないね」
「ごもっともで。歌姫は音大狙いだからいいだろうけど、しっかしバイオリンが無くなっちゃったのがどう転ぶ?」
「音大、か……。結局あいつは、自分のために音楽やらないんだな」
ご飯を口に運びながら添は呟いた。結局ああやって怒鳴っていた割には、自分のために音楽をやっていない。
親のため、入試のため、授業のため。楽しむつもりは、彼女にあるのだろうか。
「やらないっしょ。だって空白。お前勉強を誰のためにやってる? 少なくとも自分のためにやってるって、胸張って言えるか?」
「それと風音さんの音楽は違うと思うけど。あの人は物心つく前からずっと音楽の世界で生きて来たんだから、俺達みたいに強制されてやることとは違うよ」
「やっぱか。でも俺はさ、根源的な部分では繋がってるって考えるわ。親父さんからビシバシ言われてやってたんだろ、歌姫。んなら繋がってるだろうよ」
「そうかな……」
「ああ間違いない。だから下手すりゃ今頃歌姫、逆に喜んでたりしてな、なーんて」
十五穀米を旨そうに食べる万を見ながら、添は今日の事を思い返していた。バイオリンが壊れた時の、確かな風音の叫び声。
そして能恵の言葉。音楽より両親を奪えば、風音はきっと。
「能恵さんはさ」
「犯人? 俺だけど」
「だよなー。お前くらいだもんな、あんな過激な事やらかすのはさ。ってか歌姫が屋上か……。珍しいな、そりゃ」
「昨日何かあってたみたいで、黄昏れてたらしいよ」
「サボりか。ったくさ、お前受験まで1年半しかないんだからそろそろ意識すれば?」
「お前には言われたくないね」
「ごもっともで。歌姫は音大狙いだからいいだろうけど、しっかしバイオリンが無くなっちゃったのがどう転ぶ?」
「音大、か……。結局あいつは、自分のために音楽やらないんだな」
ご飯を口に運びながら添は呟いた。結局ああやって怒鳴っていた割には、自分のために音楽をやっていない。
親のため、入試のため、授業のため。楽しむつもりは、彼女にあるのだろうか。
「やらないっしょ。だって空白。お前勉強を誰のためにやってる? 少なくとも自分のためにやってるって、胸張って言えるか?」
「それと風音さんの音楽は違うと思うけど。あの人は物心つく前からずっと音楽の世界で生きて来たんだから、俺達みたいに強制されてやることとは違うよ」
「やっぱか。でも俺はさ、根源的な部分では繋がってるって考えるわ。親父さんからビシバシ言われてやってたんだろ、歌姫。んなら繋がってるだろうよ」
「そうかな……」
「ああ間違いない。だから下手すりゃ今頃歌姫、逆に喜んでたりしてな、なーんて」
十五穀米を旨そうに食べる万を見ながら、添は今日の事を思い返していた。バイオリンが壊れた時の、確かな風音の叫び声。
そして能恵の言葉。音楽より両親を奪えば、風音はきっと。
「能恵さんはさ」