タレントアビリティ
「具体的には?」
「そりゃ両親をマジに殺すか、音楽関連でコネ使って歌姫をぶち込むか……。とにかく、歌姫にとってプラスに傾く何かをやるな、間違いなく。お前が歌姫のバイオリンを叩き割った事まで利用した何かを、間違いなくやる」
「なあ万。お前どうしてそこまで能恵さんに肩入れするんだ?」
「羨ましいから」

 悪びれも無く答える万。小鉢を重ねて味噌汁を飲んで、何かを考えたそぶりを見せる事すら無く、さぞ当たり前のように答えた。

「能恵さんの才能が羨ましいから。それだけ」
「お前にだって色々あるじゃん」
「かもな。確かにクラスの真ん中に立つ事はあったりするが、俺は浮きすぎてるんだよ。それが俺は嫌なんだ。なのに能恵さん。あの人はそれすら感じさせない振る舞いで社会を生きてる。羨ましいし、妬ましいよ」
「そんなに、か」
「ああ。ま、内心お前もそんな風に思ってるんじゃねーか? 俺はある意味お前も羨ましい。嫉妬深いんだぜ、俺はさ」
「ふーん」

 興味が無いかのように添は答えた。もう正直どうでもいい。
 万の言いたい事は分かるが、しかしそれを自分自身に当て嵌める考えは理解出来ない。価値観を押し付けられる事を添は嫌う。能恵のああいうところも、それに該当する。
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