タレントアビリティ
「えへへ~」
「お疲れ様です、能恵さん」
「私ね、頑張ったんだよ? きちんと撹乱させて、国のよどみを解消させるように扇動したんだから」
「……規模は相変わらずやばいんですね」
「今回は少し楽だったけどね。きちんと噂は流したりしたから、多分後は何とかなるかなぁ」
「そうですか。それはよかったです」
「えへへ、ほめてほめて~」

 そして仕事帰りの能恵さんは、ある意味凶悪な破壊力を秘めた生物へと変貌する。見る人が見れば愛でる価値がありすぎて困る。というか犯罪。

「能恵さん」
「うん?」
「俺は俺なりにやりますよ? 能恵さんが風音さんをどう扱うかは知りませんけど、俺は俺なりに、やっぱり行動します」
「……そう言うだろうなって思った。それでこそだよ、そえ」
「でも能恵さんが、何か俺にしてほしいような事があれば、何なりと言って下さい。風音さんにはやっぱり、音楽が必要なんだ」
「そえ、やっぱり後悔してるでしょ? バイオリン壊したことをさ」
「どう、でしょうね」
「あのバイオリンさ、ウン百万する代物なんだよね。拍律の家の中でも、かなり高値」
「マジっすか」
「うん。……手が止まってるよん」

 硬直していた手に小さな手が添えられる。白くて細い手。不健康に見えるけれど、傷も何も無い能恵の手。才能をそこで紡いでは人を動かす、そんな手だ。
 添は能恵の手をそっと振り払って頭を撫でる。ふにゃりと顔を緩ませる能恵を見ながら、何をすべきかを考えるばかり。
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