タレントアビリティ
「あだま゛いだぁい……」

 朝食の席にて、ただ焼いただけのトーストをかじっている添の前で、能恵は机に突っ伏して悶えていた。いわゆる二日酔い。頬を机に当てて、トーストをかじらずにダウン。

「薬とか無いんですか?」
「な゛い……」
「……買ってきましょうか?」
「い゛らない……」
「じゃあどうしますか?」
「どーにがずるぅ……」
「そうですか」

 正直添も眠かった。午前3時に起こされて能恵に甘えられて、微妙な睡眠時間をごまかすようにコーヒーを飲みまくっていた添の目の前でうごうごされていては、こちらも困るということだ。
 トーストとコーヒーを飲み込み、ちゃぶ台から立ち上がる。うごうごしている能恵を放置して歯を磨く。奇声を発しながらうだる能恵の背中を、何かに触発されるように蹴った。

「痛いっ!」
「夜中にたたき起こして自分だけ甘えようだなんて、甘ったれた事は止めろっての」
「うぎゅう……」
「……俺は学校行きますから、頑張って復活してください」
「なによ~、ぞえ~。忌引使って休みなざい……」
「断ります」

 それだけ言い残して歯ブラシを洗面所に直し、口をゆすいでドアへと向かう。玄関に着いたところで、芋虫のようにはいずって来た能恵に呼び止められた。

「やるからぁ……」
「……はい?」
「何とか行動をとりなさい……。風音さんがいなけりゃ私が動くから、出席だけ連絡しなさい……」
「でも、二日酔いが」
「知らないわよぉ。じゃー、いってらー」

 床に突っ伏したままひらひらと手を振る能恵に、添はため息をついて家を出た。早く酒が抜ければいいのにと本気で思う。抜けずしてもバリバリ働くのが能恵なのだけれど。
 空を眺める。綺麗な空はもう秋口。夏服とのお別れはまだまだだけど、ちょっぴり寒いのかなとどこか思った。
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