タレントアビリティ
「今のが説明だったのにぃ」
「何のだよ」
「そうま君の才能。直感の説明だったの。ほら、さっき添は私から五感のうち4つを一時的に潰されて、けれど最後の1つをとっさに避けた。それが直感」
「……はい?」
「分かんないかなぁ……。例えば、試験の4択問題が残り1分で10問残ってるとするでしょ?」

 添の正面に座って能恵が説明する。右の人差し指を立ててくるくる回す様子は、その行動が能恵の脳を活性化させているようにも見える。

「全部直感でやるっきゃないですよね」
「うん。それが直感の基本。でも、普通は当たらないよね? 多少の予備知識があったとしたって、全部当たる確率はかなり低い。ううん、ゼロに近いわ」
「経験あるから分かります」

 あの恐怖感は計り知れない。これを全て当てなきゃ崩壊するというのに、しかし制限時間1分で10問。配点は1問2点。そんなシチュエーションの結果は。

「結果覚えてる?」
「英語の4択問題でしたけど、4問正解だったんで何とかなりましたよ。いやー怖かった……」
「その試験は何の試験?」
「週末テストですね。毎週金曜日にやる、内申とかに結構響くテストですよ」
「ま、日常的なテストと」

 くるくる回していた人差し指を添に向けて、ちょっと真顔になった能恵が続けた。指が目の間に突き付けられてチリチリする。欝陶しい。
 添はそれを無言でずらした。能恵は気にする事なく続ける。

「じゃあそれが、センター試験の英語の最後だったら?」
「はい?」
「そえは現役合格以外にダメ。でもこの英語を失敗しちゃったら危ない。なのに今までに時間をかけすぎて、残り5分しかない!」
「……考えたくない」
「考えてよ。もしかしたらそえがそんな奈落に陥るかもだから。……長文全部読む時間なんてない。解答選択肢をそっこーで訳して、それこそ超直感でやるっきゃない!」
「マジ……?」

 確かセンター試験英語(筆記)の長文問題の配点は42点。読めば確実に分かるはずなのだが、読む時間が全く残っていない。そんな絶体絶命の状況で、超直感に頼れというらしい。
 無茶苦茶な状況。しかし能恵が言いたい事は、概観だけだが何となく分かった。
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