タレントアビリティ
「わかんねぇ……」

 かといって何が胃腸に優しいかなんて分からない。日頃は何を買えばいいのかの指定が直接あるためその通りに買えばいいのだが、しかし今日は違う。買い物かごにあるのは胃腸薬だけだった。

「生ものはアウト、かな」

 野菜ならいっかと野菜コーナーへ向かう。その途中の雑貨コーナーのメモリー売り場に、添はある影をみてしまった。
 見なければよかった。しかし、声をかける。

「狙いはなんだよ、走馬君」
「来ると思った」

 小柄な中学生、睦貴走馬。手早く奪った単3電池をポケットに納めてから、何もなかったかのように走馬がにやける。

「このスーパーちょろいんだぜ?」
「万引きは犯罪だろ。止める義理は無いけど、いつかばれると思うな」
「るせーよ。ボクはボクの勝手にやる」

 陳列棚にもたれて吐き捨てる走馬。添はそんな彼の正面に立って、とある実験でもやってみるかと思い立った。かごを置いてコインを取り出す。高く弾いてキャッチ、握りこぶしを作った。

「どーっちだ」
「左」

 左を開く。コインがある。もう1回。

「どっち」
「左」
「正解。じゃあ……、はいっ」
「右」
「当たり。……よっ」
「右」
「すごいな。……よいせっ」
「左」
「……マジだ。おりゃっ」
「右」
「……うらあっ!」
「右」

 7連チャンでの当たり。これはなかなか当たるもんじゃない。反則的なヒット数に、能恵の選別眼の確かさを覚える。
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