タレントアビリティ
「あー分かった分かった。分かったから」
「うるっさいんだよーっ!」

 右手の裏拳が陳列棚に直撃。直感的に倒れやすいところをモロに殴ったためか、巨大な棚は呆気なくぐらつく。そして商品をぶちまけて倒れて、主婦で賑わうスーパーに轟音がけたました。

「……やっちまった」
「だいったいなんのつもりだおマエぇ!! むかんけーなおマエがボクにいちいちゴチャゴチャやるなってんだーっ!!」

 崩壊した棚には目もくれずに走りだし、何故か添につかみ掛かろうとする走馬。目には色が無く、完全に暴走したそのままに突っ込んで来た。
 添のとっさの判断。どう考えてもこれはまずい。雑貨コーナーの裏側は不都合にも電球コーナー。粉々になったパルック達の哀しい末路をチラ見してしまったために、賠償とか面倒な事情になってしまう。

 つまり、行動は決まっていた。






「三十六計!」

 背を向けて猛ダッシュ。スタッフオンリーの空間からは顔を紫にした店長らしきおじさんがやってくる。が、無視。

「なんなんだよおマエーっ!」

 事の原因が追い掛けてくる。腕をぶんぶん振り回しているようなその様子はコミカルではあるが、しかし目が怖い。そして速い。
 添も本気で走る。ひどい状況になったスーパーを走り去り、駐輪場の自転車の鍵を外して飛び乗る。ペダルを踏み込み、超加速。しかし走馬は追う、追う、追う。そんなチェイスが、しばし続いた。
< 98 / 235 >

この作品をシェア

pagetop