my name
気分は最悪。
もう帰りたい。
と言っても今はまだ玄関の前だけど…。
「じゃ、鍵貸して?」
「あ、はい」
赤木君の手の平に自転車の鍵を置いた。
鍵を外すと、赤木君はあたしの自転車に跨った。
「はい、座って」
「し、失礼します!」
「自分の自転車なのに(笑)」
近っ!
背中目の前なんですけどっ!
「ちゃんと掴まった?」
えっと、どうしよう…。
どこに掴まればいいの?
「ん?」
返事をしないあたしが気になったのか、赤木君が振り向いた。
その声に反応して顔を上げると、赤木君の顔が目の前にあった。
「うわっ」
と言って自転車から後ろに飛び降りてしまった。
顔近っ!と思ったら体が勝手に動いていたんだ。
「え、何!?」
「あ!ご、ごめん!何でもない」
恥ずかしい!
やってしまった!
頭の中はこの言葉でいっぱいだったけど、何事もなかったかの様に座り直した。
「大丈夫?行くよ?」
「はい、どうぞ…」
あたしは急いでサドルに掴まった。