冬のロマンス
 ・・・哲平の前で、自分はこんな表情をしていたのか。
 ・・・哲平は、こんな風に自分を見つめていたのか。
 愛されていると、愛していると・・・言葉にしなくても伝わる思いがそこには溢れていた。
 黙り込んだまま一言もない沙成に、哲平は不安になった。いつもなら、絵画とは畑が違うものの、画商の観点から色々と感想やアドバイスをくれるのに。
 よほど気に入らなかったのだろうか。・・・自分としては今までで最高の出来だと思ったからこそ、伸ばしてパネルにしたのに。
 だが哲平の想いは杞憂だった。
「・・・ポートレートが苦手なんて、嘘吐きだよ、おまえ」
「え、じゃあ気に入ってくれた?!」
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