姫と竜 *王子が誘拐*

 
「…っ 離して。」


力なく抵抗する彼女が、更にいとおしくなった。


「エリーゼ…すまなかった。」

「……。」


触れ合った体が冷たい。アクトはもう一度 強く抱き締めた。


「やめてっ…」

ズキッと胸が締まる。

だがもう離せない。


「そなたが気に病む事ではない。我が先に兵を行かせたのだ。我が行くべきだった。」


言葉に詰まりながらも言ったが、これ以上上手くは出てこない…

胸は鼓動が波打ち目が渇いた。このような感情がまだ私にも残っていたのか──




逸る心とは裏腹に、アクトの手は緊張で小刻みに震えていた。




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