この腕の中で君を想う
-白山奏斗side-
カタカタとキーボードを打つ手を止めて、徐に時計を見ると定時をとっくの昔に過ぎていた
俺はカタンと立ち上がり、残っている社員に向かって
「定時過ぎてるから仕事が片付いてる人は勝手に帰ってもらって構わない」
静かにそう言えば、周りの社員は少しホッとしたような顔をして帰り支度をするべく書類をしまい始める
…どうやら機嫌が悪いのが顔に出ていたようで、みんな帰るのを躊躇っていたようだ
公私混同も甚だしいな…と小さく溜息をついて、社員全員がいなくなるのを確認した後、俺もオフィスから出ようとすれば、見知った人物がタイミングよくドアを開けて飛び込んできた
「奏ちゃーん♪今帰るの?ご飯行こー」
「断る」
面倒臭そうにそう言えば、腰に抱きつくお調子者の大馬鹿野郎…増田はニヤニヤしながら
「うわっ‼そんなキッパリ言う⁉この前の事怒ってるんならゴメンって~。奢るからさ♪」
「そんなものいらない…って腕離せ‼」
「奏ちゃん騒がないの~。じゃ、レッツゴー♪」
俺の意見を無視して増田はへラリと笑うと、俺の腕を掴んで無理矢理外へ連れ出した