アリスズ
☆
「何をしてるのかね?」
畑から、しっかりと熟した野菜をもぎりとりながら、男は景子に声をかける。
彼女が、地面にはいつくばっていたからだ。
「この畑の土は、あっちとちょっと違うみたいなんで…」
ごそごそ。
景子は、土の感じを確かめていた。
土質そのものが、軽めでさらっとしているのだ。
「ああ、ここから北西は、もともと湖があったところだからな」
顎髭に触れながら、男も足元を覗き込む。
「太陽に負け、干上がったようだがな…ハハハ」
そこは、笑うところなんだろうか。
豪快に笑い飛ばされて、景子は苦笑するしか出来ない。
「だが、都の外に流れている川から水を引いているから、水の心配はないし…街中には井戸もある。水の心配はないぞ」
説明に、なるほどと頷く。
ここは昔、湖の中だったのだ。
「土というよりは砂地ですね…水をたくさんあげなきゃいけないから大変でしょうね…それとも、この作物は水を大して必要としませんか?」
景子は、指の間から抜ける砂を見ながら唸る。
彼女は、きわめて真面目に地面にへばりついていた。
「アッハッハッハッハ!」
なのに、だ。
突然、男は大笑いを始めるではないか。
ぎょっとして、景子が顔をあげなければならないほど。
「植物病とは聞いていたが…本当に、根っこから病気のようだな」
どこに病気があるのかと、景子は慌てて左右を見回した。
しかし、男の視線は彼女をド真ん中で貫いている。
「わ、わたしですか?」
景子がおそるおそる自分を指すと。
「他に誰がいるのかね。異国の女よ」
彼の、金琥珀の目がぎらっと光った気がして、ぎくりとする。
景子のことを、この人はいろいろ知っているのだ。
「ええと、すみません…どちらさまでしょうか?」
おそるおそる、誰なのか確かめようとする。
「ザルシェイダハクシス・イデアメリトス・カラナビル16と名乗らせてもらおう」
相変わらず、この国の人の名前は長いなあ。
景子は、必死に音を記憶しようとしたが、解読するまでに若干時間がかかってしまった。
「何をしてるのかね?」
畑から、しっかりと熟した野菜をもぎりとりながら、男は景子に声をかける。
彼女が、地面にはいつくばっていたからだ。
「この畑の土は、あっちとちょっと違うみたいなんで…」
ごそごそ。
景子は、土の感じを確かめていた。
土質そのものが、軽めでさらっとしているのだ。
「ああ、ここから北西は、もともと湖があったところだからな」
顎髭に触れながら、男も足元を覗き込む。
「太陽に負け、干上がったようだがな…ハハハ」
そこは、笑うところなんだろうか。
豪快に笑い飛ばされて、景子は苦笑するしか出来ない。
「だが、都の外に流れている川から水を引いているから、水の心配はないし…街中には井戸もある。水の心配はないぞ」
説明に、なるほどと頷く。
ここは昔、湖の中だったのだ。
「土というよりは砂地ですね…水をたくさんあげなきゃいけないから大変でしょうね…それとも、この作物は水を大して必要としませんか?」
景子は、指の間から抜ける砂を見ながら唸る。
彼女は、きわめて真面目に地面にへばりついていた。
「アッハッハッハッハ!」
なのに、だ。
突然、男は大笑いを始めるではないか。
ぎょっとして、景子が顔をあげなければならないほど。
「植物病とは聞いていたが…本当に、根っこから病気のようだな」
どこに病気があるのかと、景子は慌てて左右を見回した。
しかし、男の視線は彼女をド真ん中で貫いている。
「わ、わたしですか?」
景子がおそるおそる自分を指すと。
「他に誰がいるのかね。異国の女よ」
彼の、金琥珀の目がぎらっと光った気がして、ぎくりとする。
景子のことを、この人はいろいろ知っているのだ。
「ええと、すみません…どちらさまでしょうか?」
おそるおそる、誰なのか確かめようとする。
「ザルシェイダハクシス・イデアメリトス・カラナビル16と名乗らせてもらおう」
相変わらず、この国の人の名前は長いなあ。
景子は、必死に音を記憶しようとしたが、解読するまでに若干時間がかかってしまった。