アリスズ
☆
「ニホン?」
聞き覚えがないように、ザルシェは呟く。
この大陸以外の国を、思い出そうとしているのだろうか。
「あ、あの…多分、すごく遠くです」
無駄な努力をさせまいと、景子はそう言った。
「多分…遠く」
その言葉をかみ締めた後、イデアメリトスの長は彼女を見るのだ。
「そうか。多分、遠くから来たか…なるほど。それは難儀だったろう」
何故か。
ザルシェは、納得してしまった。
いいのかなあ。
景子は首をひねりかけたが、彼は不思議な魔法の力を持っているのだ。
少々の不思議ごときでは、怯まないのかもしれない。
「むかし、そういう男と会ったことがあるのだ…私も。男だったのが、大変残念だったがね」
苦笑ぎみに呟いた彼に、景子は飛び上がるほど驚いた。
「そんな人が? いまは、どこに!?」
反射的に歩を進め、ザルシュに詰め寄っていた。
景子たちだけでは、ないというのだ。
どこか、遠くからきた人間は。
「ああ…夢の中だがな」
だが。
答えに、あっさりと景子は撃沈した。
夢では、会いに行けるはずもない。
「何故そうがっかりする…夢もひとつの世界ではないか。だから私は、彼に会ったことを幻とは考えていない…何しろ、私の夢に出てきたのだからな」
堂々と、不思議ワールドを展開するザルシュの言葉に、景子は困ってしまった。
不思議を否定したい、というわけではない。
ただ。
「私たちは、夢には入れませんから…その方はきっと、私たちと違う国からこられたんだと思います」
自分と、同一の世界から来たのではないことだけは確かだった。
「なるほど…ところで…」
イデアメリトスの長は、上から景子を覗き込んできた。
少し、不思議そうに。
「ニホンに、帰りたいとは…思わないのかな?」
あれ。
聞かれた言葉が意外すぎて、彼女の頭は一瞬真っ白になったのだった。
「ニホン?」
聞き覚えがないように、ザルシェは呟く。
この大陸以外の国を、思い出そうとしているのだろうか。
「あ、あの…多分、すごく遠くです」
無駄な努力をさせまいと、景子はそう言った。
「多分…遠く」
その言葉をかみ締めた後、イデアメリトスの長は彼女を見るのだ。
「そうか。多分、遠くから来たか…なるほど。それは難儀だったろう」
何故か。
ザルシェは、納得してしまった。
いいのかなあ。
景子は首をひねりかけたが、彼は不思議な魔法の力を持っているのだ。
少々の不思議ごときでは、怯まないのかもしれない。
「むかし、そういう男と会ったことがあるのだ…私も。男だったのが、大変残念だったがね」
苦笑ぎみに呟いた彼に、景子は飛び上がるほど驚いた。
「そんな人が? いまは、どこに!?」
反射的に歩を進め、ザルシュに詰め寄っていた。
景子たちだけでは、ないというのだ。
どこか、遠くからきた人間は。
「ああ…夢の中だがな」
だが。
答えに、あっさりと景子は撃沈した。
夢では、会いに行けるはずもない。
「何故そうがっかりする…夢もひとつの世界ではないか。だから私は、彼に会ったことを幻とは考えていない…何しろ、私の夢に出てきたのだからな」
堂々と、不思議ワールドを展開するザルシュの言葉に、景子は困ってしまった。
不思議を否定したい、というわけではない。
ただ。
「私たちは、夢には入れませんから…その方はきっと、私たちと違う国からこられたんだと思います」
自分と、同一の世界から来たのではないことだけは確かだった。
「なるほど…ところで…」
イデアメリトスの長は、上から景子を覗き込んできた。
少し、不思議そうに。
「ニホンに、帰りたいとは…思わないのかな?」
あれ。
聞かれた言葉が意外すぎて、彼女の頭は一瞬真っ白になったのだった。