アリスズ
☆
七の段をクリアしたシェローにとって、八と九の段は、単なる歌に過ぎなかったようだ。
あっさりと、覚えてしまったのである。
「ケーコ、俺、計算早いってほめられた!」
19日の休みの日、部屋を襲撃しに来たシェローが、嬉しそうに飛びついてきた。
「よかったねー。すごいねー」
それを、ニコニコしながら抱きとめる。
景子は、高等科に送られることになっていた。
シェローと、途中までしか一緒に通えなくなる。
校舎が別なのだ。
15歳くらいの子たちが集まるところで、なおかつ、町の子の中でも裕福な層しか行けなくなる。
問題はここからだと、職場のネイディに言われていた。
ネイディも、この学校出身だったのである。
高等科からは貴族の下の方と、裕福な商人の子などが、同じ校舎で勉強するのだ。
教室には、一人兵士が立っているという状態で。
何故、兵士が立っていなければならないか。
上の貴族にいじめられる立場の貴族の子息にとって、町の子は格好のいじめの対象だからだ。
その騒ぎは、とても教師だけで収められるものではなく、ついに兵士を置くようにしたというのである。
そこまでして、何故貴族と町民を一緒にするのか。
だが、それはイデアメリトスの長が、決めたことだという。
おそらく、競い合わせることにより、どちらも勉学に励ませよう──そう思ったのだろう。
さすがに、勉強が専門的になってきた。
難しい言葉や、国の仕組みで右往左往することはあったが、算数で困ることはなかった。
中学程度の数学でも、ここでは十分高等なものだったからだ。
「何で、大人がこんなとこ、通ってんだよ」
ただし。
貴族のおぼっちゃん方の目からは、逃れられなかったが。
「お仕事です」
農林府の役人の証でもある、緑と黄色のスカーフを、景子は持ち歩いていた。
学校が終わったら、出勤しなければならないからだ。
そのスカーフの威力や絶大で。
将来、役人になろうと考えている子供たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていったのだった。
七の段をクリアしたシェローにとって、八と九の段は、単なる歌に過ぎなかったようだ。
あっさりと、覚えてしまったのである。
「ケーコ、俺、計算早いってほめられた!」
19日の休みの日、部屋を襲撃しに来たシェローが、嬉しそうに飛びついてきた。
「よかったねー。すごいねー」
それを、ニコニコしながら抱きとめる。
景子は、高等科に送られることになっていた。
シェローと、途中までしか一緒に通えなくなる。
校舎が別なのだ。
15歳くらいの子たちが集まるところで、なおかつ、町の子の中でも裕福な層しか行けなくなる。
問題はここからだと、職場のネイディに言われていた。
ネイディも、この学校出身だったのである。
高等科からは貴族の下の方と、裕福な商人の子などが、同じ校舎で勉強するのだ。
教室には、一人兵士が立っているという状態で。
何故、兵士が立っていなければならないか。
上の貴族にいじめられる立場の貴族の子息にとって、町の子は格好のいじめの対象だからだ。
その騒ぎは、とても教師だけで収められるものではなく、ついに兵士を置くようにしたというのである。
そこまでして、何故貴族と町民を一緒にするのか。
だが、それはイデアメリトスの長が、決めたことだという。
おそらく、競い合わせることにより、どちらも勉学に励ませよう──そう思ったのだろう。
さすがに、勉強が専門的になってきた。
難しい言葉や、国の仕組みで右往左往することはあったが、算数で困ることはなかった。
中学程度の数学でも、ここでは十分高等なものだったからだ。
「何で、大人がこんなとこ、通ってんだよ」
ただし。
貴族のおぼっちゃん方の目からは、逃れられなかったが。
「お仕事です」
農林府の役人の証でもある、緑と黄色のスカーフを、景子は持ち歩いていた。
学校が終わったら、出勤しなければならないからだ。
そのスカーフの威力や絶大で。
将来、役人になろうと考えている子供たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていったのだった。