アリスズ

 わあ。

 景子は、その眩しさに目を細めた。

 着物の女性も袴の人も、とてもとても鮮やかな光をまとっている。

 若々しい証しだ。

 一瞬では分からなかったが、二人とも多分高校生くらい。

 そして。

 二人は、とてもよく似た光の色をしていた。

 魂の色がそっくりだったのだ。

 姉妹なんだ。

 景子は、袴の人も女性であると気づいた。

 すらりと背が高く、髪も短いし凛とした顔立ちをしているが、まとう光の色が教えてくれるのだ。

 こんな理屈を人が聞いたら、頭がおかしいと思われるかもしれない。

 しかし、景子には『それ』が見えた。

 子供の頃から、ずっと。

 ただ、それを口にしてはいけないと、成長するごとに自分の身で知っていったのだ。

 そうしなければ、この世界では生きていけないと。

 子供の頃、よく花屋のおばあちゃんのところに泣きついていた。

『みんなが私を嘘つきっていうの!』
『みんな私を気持ち悪いって!』
『どうして、私にはこんな変なものが見えるの!?』

 その度に、おばあちゃんは優しく、景子の天然パーマの頭をなでてくれたのだ。

『大丈夫だよ景子。お前に見えるものは、お天道様にも見えるものだ。お前は、お天道様と同じものが見える目をもらったんだよ』

 おばあちゃんは、景子の見る力に『お天道様の目』と名前をつけてくれた。

 大人になるにつれ、彼女もだいぶうまくその目と付き合えるようになってきたのだ。

 が。

 社会人になって、ついにドロップアウトした。

 田舎の短大から都市の企業に出た彼女の目に、たくさんのつらいものが映ってしまったからだ。

 それでノイローゼになりかけて、景子はこの花屋に逃げ込んだのである。

 それが、彼女が花屋を継いだ理由。

 そんな彼女の目に、姉妹が映る。

 しかも、ただの姉妹ではない。

 限りなく魂の色の近い二人。

 前に、彼女はほんの数回、同じ体験をしたことがあった。

 ああ、この子たち──双子なんだわ。
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