アリスズ
□
「私…イデアメリトスでなくても…アディマのことが好きよ」
とぎれとぎれの、ケイコの言葉。
素直で素朴な声が、アディマへの思いを綴ってくれる。
ああ。
その声を、彼は心に刻む。
ひとつひとつが、ケイコの心で出来ている音だ。
彼女は、最初からイデアメリトスを必要としていない。
名誉も富も、何ひとつケイコは欲しがっていなかった。
ただ、そこに植物があって、それと戯れていられれば幸せな女性なのだ。
「ええと…でもね…」
否定の言葉がつながるのを、アディマは目を伏せないように耐えながら待つ。
「私…イデアメリトスのお妃様とかには、向いてないと思うの」
まつ毛が、震える。
胸に渦巻く苦しさに、目を閉じたがっているのだ。
だが、踏みとどまる。
しっかりと、踏みとどまる。
彼は、イデアメリトスの唯一の世継ぎだ。
たとえ心が砕けようと、立ち続けなければならない。
「お妃様には…なれないと思うんだけど…」
逡巡する、唇。
その。
唇が。
「えと…アディマの子供なら…産みたいな」
不思議な音を、織り上げた。
はっと、彼女の顔を見つめる。
「あっ、いや…産まれる子供が、魔法の力があるとかないとか…そんなことは…どうだっていいの」
視線にびくっとしながら、ケイコは声を跳ねさせて言い訳めいた言葉を吐く。
彼女から目を離せないまま、アディマは奥歯で彼女の音を噛みしめた。
それは。
ケイコが、純粋に彼の子を産みたいと──そう言っているようにしか、聞こえなかったのだ。
イデアメリトスの、ひどい条件など、何一つ関係なく。
ああ、ああ。
ただ、彼のことを愛していると。
こんなに痛いほど深い『ただ』に、これまで一度も出会ったことがなかった。
「私…イデアメリトスでなくても…アディマのことが好きよ」
とぎれとぎれの、ケイコの言葉。
素直で素朴な声が、アディマへの思いを綴ってくれる。
ああ。
その声を、彼は心に刻む。
ひとつひとつが、ケイコの心で出来ている音だ。
彼女は、最初からイデアメリトスを必要としていない。
名誉も富も、何ひとつケイコは欲しがっていなかった。
ただ、そこに植物があって、それと戯れていられれば幸せな女性なのだ。
「ええと…でもね…」
否定の言葉がつながるのを、アディマは目を伏せないように耐えながら待つ。
「私…イデアメリトスのお妃様とかには、向いてないと思うの」
まつ毛が、震える。
胸に渦巻く苦しさに、目を閉じたがっているのだ。
だが、踏みとどまる。
しっかりと、踏みとどまる。
彼は、イデアメリトスの唯一の世継ぎだ。
たとえ心が砕けようと、立ち続けなければならない。
「お妃様には…なれないと思うんだけど…」
逡巡する、唇。
その。
唇が。
「えと…アディマの子供なら…産みたいな」
不思議な音を、織り上げた。
はっと、彼女の顔を見つめる。
「あっ、いや…産まれる子供が、魔法の力があるとかないとか…そんなことは…どうだっていいの」
視線にびくっとしながら、ケイコは声を跳ねさせて言い訳めいた言葉を吐く。
彼女から目を離せないまま、アディマは奥歯で彼女の音を噛みしめた。
それは。
ケイコが、純粋に彼の子を産みたいと──そう言っているようにしか、聞こえなかったのだ。
イデアメリトスの、ひどい条件など、何一つ関係なく。
ああ、ああ。
ただ、彼のことを愛していると。
こんなに痛いほど深い『ただ』に、これまで一度も出会ったことがなかった。