アリスズ
☆
出ようと、したのだ。
なのに、後ろからの手が、彼女を引きもどして──抱きあげる。
「あっ…アディマ…っ」
驚きのあまりに、声が上ずってしまった。
「その身体で歩くのはつらいだろう…部屋まで送っていくよ」
お、お、お、お、送っていくって!
東翼から西翼までの間には、人の多い中央の宮殿があるのだ。
いくら夜になったとは言え、誰もいないわけではない。
景子との逢瀬は、秘密なのだ。
これでは、秘密でも何でもないではないか。
「髪を一本、抜いてくれないか」
アディマは、微かに頭を景子の方へと傾ける。
両腕は、彼女を抱きあげているせいで、空いてないのだ。
魔法を使う気なのだろうか。
おそるおそる、手を伸ばして彼の黒髪を一本取る。
彼の目を見ると──そう、と頷いてくれた。
ぷつん。
さしたる抵抗もなく、それは引き抜かれる。
イデアメリトスは、それを手に巻きつけて使っていた。
だが、彼の両手はふさがっていて。
「唇に、くわえさせて」
言われるがまま、ぴんと髪を横に張って、彼の唇に挟むような形でくわせさせる。
アディマは、しゃべることが出来なくなり、目を細めながら彼女を見つめた。
そのまま部屋を出て、東翼の廊下から中庭へと歩いていく。
ぽっと。
暗くなりかけた庭に、緑の火がともった。
彼の唇の髪の毛が、緑に燃え上がったのだ。
何が起きるのかと思っていたら。
「………!」
声にならない悲鳴と、みぞおちを襲う浮遊感。
アディマは──空を飛んだのだ。
あわわわわわわ!
景子は、彼の首にぎゅうっとかじりついているしか出来なかった。
出ようと、したのだ。
なのに、後ろからの手が、彼女を引きもどして──抱きあげる。
「あっ…アディマ…っ」
驚きのあまりに、声が上ずってしまった。
「その身体で歩くのはつらいだろう…部屋まで送っていくよ」
お、お、お、お、送っていくって!
東翼から西翼までの間には、人の多い中央の宮殿があるのだ。
いくら夜になったとは言え、誰もいないわけではない。
景子との逢瀬は、秘密なのだ。
これでは、秘密でも何でもないではないか。
「髪を一本、抜いてくれないか」
アディマは、微かに頭を景子の方へと傾ける。
両腕は、彼女を抱きあげているせいで、空いてないのだ。
魔法を使う気なのだろうか。
おそるおそる、手を伸ばして彼の黒髪を一本取る。
彼の目を見ると──そう、と頷いてくれた。
ぷつん。
さしたる抵抗もなく、それは引き抜かれる。
イデアメリトスは、それを手に巻きつけて使っていた。
だが、彼の両手はふさがっていて。
「唇に、くわえさせて」
言われるがまま、ぴんと髪を横に張って、彼の唇に挟むような形でくわせさせる。
アディマは、しゃべることが出来なくなり、目を細めながら彼女を見つめた。
そのまま部屋を出て、東翼の廊下から中庭へと歩いていく。
ぽっと。
暗くなりかけた庭に、緑の火がともった。
彼の唇の髪の毛が、緑に燃え上がったのだ。
何が起きるのかと思っていたら。
「………!」
声にならない悲鳴と、みぞおちを襲う浮遊感。
アディマは──空を飛んだのだ。
あわわわわわわ!
景子は、彼の首にぎゅうっとかじりついているしか出来なかった。