アリスズ

 いやな予感──それは、ちょっと外れたのかもしれない。

 ロジューの屋敷に戻り、数日が過ぎた頃。

 再開した温室の工事に立ち会おうと、景子は庭に出ようとしていた。

 そこで。

 ぴかぴかの光を見たのだ。

 あれ?

 彼女は、自分のおなかを見た。

 服に隠れているので、わずかに光っている、くらいしか分からない。

 景子は、顔を上げた。

 視線の先は、もともとぴっかぴか光っているため、服を着ていてもそのおなかが、余計に光を放っているのが分かる。

 誰の話か?

 ここの女主人──ロジューのことである。

 えええええーーー?

 景子は、顎をかくーっと外しながら、その光に目が釘付けになっていた。

 こ、これは、どういうこと!?

 ロジューのおなかが、ぴかぴかしている。

 そのぴかぴかが、景子と同じ理由であるとするのならば。

「何だ…その顔は?」

 彼女の方に近づきながら、ロジューは怪訝な顔を隠さなかった。

「え…あの…その…」

 顔を見て、おなかを見て、また顔を見て、もう一度おなかを見る──景子は、とても忙しかったし、正直者だったのだ。

「ん?」

 ロジューもまた、景子の視線に引っ張られるように、自分のおなかを見るのだ。

 一瞬。

 彼女の動きが、完全に止まった。

 そして、ゆっくりゆっくりと景子へと視線を戻す。

「……?」

 ロジューは自分のおなかに手をあてて、首を傾げた。

 何かを、そこから感じようとしているかのようだ。

 景子は、そんな彼女に、おそるおそる頷いて見せた。

 その頷きを見て──ロジューは、ニヤッと笑うではないか。

「そうか…じゃあ、後でいいところに連れていってやろう」

 何がどうなって「じゃあ」なのか。

 景子には、さっぱりわからなかった。
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