アリスズ

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 ケイコへ。

 素晴らしい太陽が輝く日々が続いているが、健やかだろうか。

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 そんな文章で始まるアディマの手紙は、景子を気遣う内容でいっぱいだった。

 ようやくロジューが帰ったかと思うと、今度は夕食で。

 全ての雑事が終わって、景子が部屋に戻ってきた時には、既に外は真っ暗だった。

 ソファに座り、テーブルの燭の灯りで手紙を読んでいた。

 困ったことがあれば、叔母に遠慮なく言うようにと書いてある。

 本当に、過保護だなあ。

 景子は、苦笑してしまった。

 これまでだって、彼女はリサーの叔父の家や農林府やロジューのところで、普通にすごせていたのだ。

 そんなに心配しなくていいのに。

 そう思いながらも、彼の気遣いはとても嬉しかった。

 三、四度読み返した後、手紙を膝の上に置いてふぅとため息をつく。

 そして、手紙の最後のサインを見るのだ。

 アディマの手による、自分自身の名前。

 そして、宛名の自分の名前のところ。

 これも、やはり彼の手による文字だ。

 ふと。

 窓の外に、光が動いた気がした。

 んん?

 夜に、外に誰かいるのだろうか。

 珍しいなと、視線を動かしてみたが、もう光はどこにもない。

 んー。

 これまで目撃したことはないが、夜に出歩く人と言えば。

 景子の頭の中では。

 あの黒豹のようなスレイくらいしか、思いつかなかったのだった。
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