アリスズ
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 出会ったのは、夜の草原。

 彼らは、逃げていた。

 月の者の、大攻勢に遭っていたのだ。

 これまで、こまかい攻撃は受けていたが、ダイ一人でなんとか出来る程度のものだった。

 しかし、その時は違ったのだ。

 イデアメリトスの君を守りつつ、この人数をさばくのは、とても難しいことだった。

「魔法を使おう…ダイエルファン、広い場所へ奴らを誘いこんでくれ」

 一度だけしか使えない魔法を使う場面が来たのだと、そう判断したのだろう。

 ダイは、その言葉に従い、平原へと抜ける道を選んだのである。

「───」

 だが。

 そこで待ち受けていたのは、見知らぬ言葉をしゃべる少女だった。

 男と、見間違うことはなかった。

 すらりとしたその身を作る骨格は、少年では作りえないものだったのだ。

 そして。

 少女でありながら、剣と一体だった。

 身体の一部であるかのように、彼女は剣と同化しているように見えたのだ。

 ぞくりと、ダイの背筋に冷ややかな気が走った。

 だが、声と気配に殺気はない。

 それを、イデアメリトスの君も気づいたようで、前に進み出る。

 リサーとダイは、同時に彼を止めようとした。

 いくら殺気がないとは言え、こんな夜に出会った異国の者なのだ。

「この草原は、これより火の海になる。戻られよ」

 だが、彼はダイとリサーを制し、自分の身が危ない状態にも関わらず、異国の者に警告したのだ。

 この御方と少女の間だけ、時間の流れが少し緩やかに感じた。

 彼女の視線が、ダイを見た。

 何の迷いもなく、彼を見たのだ。

「───?」

 彼女は、ダイに問いかける。

『お前は、戦う者だろう?』

 そう、言っているように聞こえた。

 夜でも分かる、まっすぐで凛とした瞳。

「魔法を使うのは…しばしお待ちください」

 この者とならば、魔法を使わずに乗り切れる気がしたのだ。

 しかも、加勢をしたのが女性であれば、イデアメリトスの成人の旅に傷をつけることもない。
 
 だから──イデアメリトスの君に膝を折り、戦いの許可を請うた。
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