アリスズ
☆
ぷーっ。
姉妹のやりとりに、ついつい景子は笑ってしまった。
はっと、菊の視線がこちらを向く。
「あっ、ごめんなさい…そんなつもりじゃ」
リアルな夢だなあ。
景子は、すっかりくつろいで、二人を眺めていたのだ。
そんな彼女に。
「ここは…どこだ?」
菊が、周囲に視線を移しながら、茫然と呟く。
「草原…みたいですね」
この素晴らしい景色を見ているのは、自分だけなのだろう。
景子は、光り輝く草の野を、彼女たちにも見せてあげたいと思った。
「花屋は? 地震はどうなったんだ?」
梅を支えるようにしたまま、菊は首を伸ばす。
その懸命さが、かわいそうになってくる。
だから、景子は言ったのだ。
「大丈夫、これは…夢なんですから」
両手を広げて、空気を胸いっぱいに吸い込む。
ああ、おいしい。
花屋のある田舎の空気もおいしかったが、これはまた格別だ。
雑味のない、指先までしみわたる空気だ。
「馬鹿な! これは夢じゃない!」
なのに。
菊は、即座に否定する。
困ったなあ。
景子は、苦笑した。
これが夢でなければ、何だというのか。
花屋で地震があったというのに、気が付いたら草原で寝てました──そんな馬鹿なことがあるはずがない。
第一。
これほど見事な草原など、景子の知る限り近くにはないのだから。
「そうね、夢じゃ、なさそうね」
梅もまた、細い首を持ち上げる。
「だって…定兼があるもの」
彼女は、菊が離さなかった布で巻かれた長物に、そっと触れた。
え?
「じゃあ、ここはどこだ?」
「さぁ」
そんな姉妹を前にして。
え? え? 夢じゃないって? これが、夢じゃない?
景子は、そーっと自分のほっぺたをつねってみる。
「えええーーーーー!?」
痛みが脳に届いた直後、彼女は絶叫したのだった。
ぷーっ。
姉妹のやりとりに、ついつい景子は笑ってしまった。
はっと、菊の視線がこちらを向く。
「あっ、ごめんなさい…そんなつもりじゃ」
リアルな夢だなあ。
景子は、すっかりくつろいで、二人を眺めていたのだ。
そんな彼女に。
「ここは…どこだ?」
菊が、周囲に視線を移しながら、茫然と呟く。
「草原…みたいですね」
この素晴らしい景色を見ているのは、自分だけなのだろう。
景子は、光り輝く草の野を、彼女たちにも見せてあげたいと思った。
「花屋は? 地震はどうなったんだ?」
梅を支えるようにしたまま、菊は首を伸ばす。
その懸命さが、かわいそうになってくる。
だから、景子は言ったのだ。
「大丈夫、これは…夢なんですから」
両手を広げて、空気を胸いっぱいに吸い込む。
ああ、おいしい。
花屋のある田舎の空気もおいしかったが、これはまた格別だ。
雑味のない、指先までしみわたる空気だ。
「馬鹿な! これは夢じゃない!」
なのに。
菊は、即座に否定する。
困ったなあ。
景子は、苦笑した。
これが夢でなければ、何だというのか。
花屋で地震があったというのに、気が付いたら草原で寝てました──そんな馬鹿なことがあるはずがない。
第一。
これほど見事な草原など、景子の知る限り近くにはないのだから。
「そうね、夢じゃ、なさそうね」
梅もまた、細い首を持ち上げる。
「だって…定兼があるもの」
彼女は、菊が離さなかった布で巻かれた長物に、そっと触れた。
え?
「じゃあ、ここはどこだ?」
「さぁ」
そんな姉妹を前にして。
え? え? 夢じゃないって? これが、夢じゃない?
景子は、そーっと自分のほっぺたをつねってみる。
「えええーーーーー!?」
痛みが脳に届いた直後、彼女は絶叫したのだった。