アリスズ
☆
物凄く、いい部屋に通されてしまった。
景子は、ガチガチに固まったまま、そこに座っていた。
周りには、誰もいない。
そう、菊さえも、だ。
彼女が入れない理由は、帯刀のせい。
武器は預かると言われたが、彼女はそれを受けられなかった。
「悪いね」
彼女は、そう言って外に残ったのだ。
ここで彼女の身が、危なくなることはないだろう。
だから、菊に守ってもらう必要はないのだが。
精神的な支えがない中での一人ぼっちは、プレッシャーを増やすばかり。
そんな彼女のいる部屋に、ノッカーの音が軽く響く。
びくっとしながら、景子は椅子から立ち上がった。
セルディオウルブ卿──あの老人だったのだ。
景子は、ほぉと胸をなでおろした。
偉い身分なのは分かるが、おしゃべり好きの優しい老人だと分かったからである。
「すまぬすまぬ…神殿に捧げてしまう前に、もう一度それに会いたくて、な」
卿は、景子の手の中のものを見る。
緊張がようやく解けて、彼女はようやく笑うことが出来た。
こんな老人なのに、枝の前では子供のようではないか、と。
差し出すと、いとおしそうに見つめた後、もう一度匂いを嗅ぐ。
そこで、景子ははっと思い出した。
「あ、あの…た、種…種があります」
枝はあげられないが、種ならいくつか荷物の中だ。
景子は、慌ててそれを解いて、きちんと乾燥させた種を一粒持ち上げた。
「おお…種もあるのか…そうか、お前さんも果実を食べたのだな。しかし、太陽の木は難しい、わしも食べた種を、庭の一番いい場所に埋めたのだが、結局芽吹かなかったのだ」
朝日の木ですら、この町では1か所しか根づかなかった。
そう付け足される。
彼女たちが見てきた、あの木だろう。
んーんー。
景子は、太陽の木とこの町の木を、頭に思い描いた。
何か。
何か、ひっかかったのだ。
「あ!」
配線が──つながった音がした。
物凄く、いい部屋に通されてしまった。
景子は、ガチガチに固まったまま、そこに座っていた。
周りには、誰もいない。
そう、菊さえも、だ。
彼女が入れない理由は、帯刀のせい。
武器は預かると言われたが、彼女はそれを受けられなかった。
「悪いね」
彼女は、そう言って外に残ったのだ。
ここで彼女の身が、危なくなることはないだろう。
だから、菊に守ってもらう必要はないのだが。
精神的な支えがない中での一人ぼっちは、プレッシャーを増やすばかり。
そんな彼女のいる部屋に、ノッカーの音が軽く響く。
びくっとしながら、景子は椅子から立ち上がった。
セルディオウルブ卿──あの老人だったのだ。
景子は、ほぉと胸をなでおろした。
偉い身分なのは分かるが、おしゃべり好きの優しい老人だと分かったからである。
「すまぬすまぬ…神殿に捧げてしまう前に、もう一度それに会いたくて、な」
卿は、景子の手の中のものを見る。
緊張がようやく解けて、彼女はようやく笑うことが出来た。
こんな老人なのに、枝の前では子供のようではないか、と。
差し出すと、いとおしそうに見つめた後、もう一度匂いを嗅ぐ。
そこで、景子ははっと思い出した。
「あ、あの…た、種…種があります」
枝はあげられないが、種ならいくつか荷物の中だ。
景子は、慌ててそれを解いて、きちんと乾燥させた種を一粒持ち上げた。
「おお…種もあるのか…そうか、お前さんも果実を食べたのだな。しかし、太陽の木は難しい、わしも食べた種を、庭の一番いい場所に埋めたのだが、結局芽吹かなかったのだ」
朝日の木ですら、この町では1か所しか根づかなかった。
そう付け足される。
彼女たちが見てきた、あの木だろう。
んーんー。
景子は、太陽の木とこの町の木を、頭に思い描いた。
何か。
何か、ひっかかったのだ。
「あ!」
配線が──つながった音がした。