アリスズ
☆
「囲まれたところに…木か建物に、囲まれたところに植えてください!」
景子は、種を一粒──セルディオウルブ卿に差し出した。
そうだ。
太陽の木も、この町の木も、どちらも囲まれた中にいた。
森の木々の中と、建物の真ん中。
この種類の木は、周囲に何か高いものを欲しがるんじゃないか。
景子の脳みそは、そんな答えを出したのだ。
あれは、木にとって悪いのではないか。
景子は、最初はそう思った。
だが、そうじゃないとしたら?
この木は、周囲を何かに囲まれ、日当たりが悪い方が苗木が育ちやすいのかもしれない。
そして、太陽を目指して一直線に伸びてゆく。
これまで、太陽の木の種だと知っていた人々は、おそらく日当たりのいい、周囲に余計な木のないところに植えようとしたに違いない。
だから、芽吹かなかったし、根づかなかったとしたら──あの希少な扱いも理解できる。
「なん…と?」
老人は、驚きの声をあげた。
「太陽の木は、森の中にありました…木がいっぱい茂っている中に、一本だけ」
景子は、自分の思いつきに嬉しくなっていた。
「朝日の木? も、建物の間に生えてますよね?」
そう付け足すと、老人は「おお、おお」と感嘆の声をあげた。
「そうであったか…かの木の幼子は、太陽が苦手であったか」
ほっほっほ。
卿は、愉快そうに笑う。
景子も、にまにましてしまった。
それでもなお、生育は難しいのかもしれないが、景子には明るい希望が見えたのだ。
「最捧櫛の儀の祝福が終わったら、すぐに帰って埋めてみようぞ」
そう言って、卿は枝を景子に返した。
あ。
「あの…そ、その最捧櫛の儀って…な、何ですか?」
大層ご機嫌なセルディオウルブ卿になら、聞いても許されるような気がして。
景子は、勇気を出してみたのだった。
「囲まれたところに…木か建物に、囲まれたところに植えてください!」
景子は、種を一粒──セルディオウルブ卿に差し出した。
そうだ。
太陽の木も、この町の木も、どちらも囲まれた中にいた。
森の木々の中と、建物の真ん中。
この種類の木は、周囲に何か高いものを欲しがるんじゃないか。
景子の脳みそは、そんな答えを出したのだ。
あれは、木にとって悪いのではないか。
景子は、最初はそう思った。
だが、そうじゃないとしたら?
この木は、周囲を何かに囲まれ、日当たりが悪い方が苗木が育ちやすいのかもしれない。
そして、太陽を目指して一直線に伸びてゆく。
これまで、太陽の木の種だと知っていた人々は、おそらく日当たりのいい、周囲に余計な木のないところに植えようとしたに違いない。
だから、芽吹かなかったし、根づかなかったとしたら──あの希少な扱いも理解できる。
「なん…と?」
老人は、驚きの声をあげた。
「太陽の木は、森の中にありました…木がいっぱい茂っている中に、一本だけ」
景子は、自分の思いつきに嬉しくなっていた。
「朝日の木? も、建物の間に生えてますよね?」
そう付け足すと、老人は「おお、おお」と感嘆の声をあげた。
「そうであったか…かの木の幼子は、太陽が苦手であったか」
ほっほっほ。
卿は、愉快そうに笑う。
景子も、にまにましてしまった。
それでもなお、生育は難しいのかもしれないが、景子には明るい希望が見えたのだ。
「最捧櫛の儀の祝福が終わったら、すぐに帰って埋めてみようぞ」
そう言って、卿は枝を景子に返した。
あ。
「あの…そ、その最捧櫛の儀って…な、何ですか?」
大層ご機嫌なセルディオウルブ卿になら、聞いても許されるような気がして。
景子は、勇気を出してみたのだった。