アリスズ
☆
最捧櫛の儀。
イデアメリトスの血を持つ子が、櫛を捧げる儀式。
景子は、その話を聞いていた。
聞いていたら、やはりその子というのが、アディマのことだと思ったのだ。
「髪に櫛を捧げ……そして、髪を捧げるのだよ」
髪を。
あの、長い長い髪を、切るというのか。
「イデアメリトスの子の髪には、太陽の力が宿る。この神殿に櫛と髪を捧げて、初めて彼らは、神と血にイデアメリトスの後継者であることを認められるのじゃ」
わしは、それを祝いに駆けつけたというワケじゃ。
セルディオウルブ卿は、隣の領主という。
アディマの到着を知り、最初に祝おうと駆けつけたのだと。
それが、ブロズロッズの近くに住む領主の、楽しみだと言わんばかりに。
「前の二人は、誕生日までに到着できなかったが…今度は間にあったようじゃ」
心底ほっとしているのは、その旅路が困難であると知っているからなのか。
本当に、困難だった。
全ての旅程を、知っているわけではない。
しかし、短い間とは言え、いくつかの困難を共に味わったのだ。
「イデアメリトスの血など滅びてしまえ、などという輩もいてな…年を追うごとに、この儀が難しくなっておる」
何しろ、旅路の途中は数少ない供しか、つけられぬからのう。
ああ。
あの集団のことだろうか。
二人組も。
景子は、二つの事件を思い出す。
本当に。
本当に無事に、到着してよかった。
それに、何度も何度も胸をなでおろすのだ。
そんな彼女の耳に。
ノッカーの音。
「おっと…セルディオウルブ卿…こちらにおいででしたか」
明らかに、彼に驚いた様子だった。
景子に用事が、あったのだろう。
ようやく、枝の話が出来そうだ。
そう思ったのに。
切りだされた言葉は、景子の想像の遥か斜め上を駆け抜けて行ったのだった。
最捧櫛の儀。
イデアメリトスの血を持つ子が、櫛を捧げる儀式。
景子は、その話を聞いていた。
聞いていたら、やはりその子というのが、アディマのことだと思ったのだ。
「髪に櫛を捧げ……そして、髪を捧げるのだよ」
髪を。
あの、長い長い髪を、切るというのか。
「イデアメリトスの子の髪には、太陽の力が宿る。この神殿に櫛と髪を捧げて、初めて彼らは、神と血にイデアメリトスの後継者であることを認められるのじゃ」
わしは、それを祝いに駆けつけたというワケじゃ。
セルディオウルブ卿は、隣の領主という。
アディマの到着を知り、最初に祝おうと駆けつけたのだと。
それが、ブロズロッズの近くに住む領主の、楽しみだと言わんばかりに。
「前の二人は、誕生日までに到着できなかったが…今度は間にあったようじゃ」
心底ほっとしているのは、その旅路が困難であると知っているからなのか。
本当に、困難だった。
全ての旅程を、知っているわけではない。
しかし、短い間とは言え、いくつかの困難を共に味わったのだ。
「イデアメリトスの血など滅びてしまえ、などという輩もいてな…年を追うごとに、この儀が難しくなっておる」
何しろ、旅路の途中は数少ない供しか、つけられぬからのう。
ああ。
あの集団のことだろうか。
二人組も。
景子は、二つの事件を思い出す。
本当に。
本当に無事に、到着してよかった。
それに、何度も何度も胸をなでおろすのだ。
そんな彼女の耳に。
ノッカーの音。
「おっと…セルディオウルブ卿…こちらにおいででしたか」
明らかに、彼に驚いた様子だった。
景子に用事が、あったのだろう。
ようやく、枝の話が出来そうだ。
そう思ったのに。
切りだされた言葉は、景子の想像の遥か斜め上を駆け抜けて行ったのだった。