たとえばあなたが



「…おばさん、スピーディね。さすがだわ」

通いなれた千晶でさえも驚く早さで、和子は仕事をこなしていく。



「奥は予約だったから、朝のうちに下ごしらえしてあったのよ」

「それにしたって大変そう。体壊さないでね」

「大丈夫よ」

「おばさんが年とって動けなくなったら、私がお店をやって、おばさんの面倒も見てあげるから安心してね」

「ふふ。それ、聞き飽きたけどうれしいわ。ありがとう」

和子は手を休めることなく動かしながらも、うれしそうに笑った。



「さて、ちょっとビール持って奥に行くから、ゆっくりしてて」

和子が瓶ビールを3本両手に持って、暖簾の向こうに消えて行く。

その背中を見ながら、千晶は、

「なんだか切羽詰ってるわね、おばさん」

と小山に言った。



「そうかな」

「せっかく小山さんとのことを話そうと思ったのに、これじゃあ話すスキがないわ」

不満げな千晶の横で、小山は苦笑いを浮かべ、ビールを一口飲んだ。




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