たとえばあなたが



「ケ…ケンカでもした?」

わざとふざけて言ってみる。

もちろん、違うことはわかっていた。



思ったとおり、萌は、強く首を横に振った。



「千晶、最近ときどき思い詰めたような顔をするの。だから小山さんと何かあったんじゃないかって心配で…」

「だけど、何も話してくれない?」

コクリと頷く萌の目から、とうとう涙がひと粒、零れ落ちた。



「何でも話してねって言ってみたりするんだけど、いつもはぐらかされて。私、本当に千晶の友達なのかな…」

唇を噛みしめて俯く萌の前で、パスタの湯気はどんどん小さくなっていった。



「…いつから?」



いつから、我慢していたのだろう。

いつから、悩んでいたのだろう。

千晶にとって自分は何なのか、と。



萌は黙ったまま、鼻をすすった。




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