たとえばあなたが



「どこですか」

「え?」

「仕事を紹介するって、どこかアテがあるんですか」



木村は、もう松田が退職を受け入れたものとして話をしている。

それが松田を余計に苛立たせた。



「真実は違ったとしても、世間的には俺は横領犯になるんですよね。そんな人間を雇ってくれるお人好しな会社って、一体どこですか」

松田の追及に、木村はぐっと唇を結び、黙っていた。

「…黙ってるってことは、やっぱりないんですね、紹介先なんて」

「松田、聞いてくれ」

木村は絨毯で正座をして、松田を見上げる格好になった。

けれど、木村のどんな態度も、すでに松田の心には響かなかった。

それでも木村は、必死に松田に訴えかけた。



「横領分は全額返金されている。だから会社側も、事件として訴えることはせず、関係者を解雇することで事態の収拾を図る方針なんだ」

だから刑事処罰なんて受けなくていい、と木村はぎゅっと拳を握って言った。




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