たとえばあなたが



「いいか、よく聞いてくれ」

木村は、聞き分けのない子供を諭すように話し始めた。

「この会社はな、好景気に乗ってこれからどんどん大きくなる。それに合わせて社員のレベルも高くしていくつもりだ」

「レベル…?」

「周りを見てみろ。高卒で入社したのは、お前が最後だ」



つまり木村は、こう言いたいらしい。



高卒の人間に用はない。

どんなに努力しても実績を残しても、出世はできない。

だったらせめて、会社の役に立って辞めていけ、と。

うぬぼれるな、と。



「お前は人当たりがいいし、真面目だ。だから別の道でやり直せばきっと成功する」

「どう…して、そんなこと…」



じゃあ、今までの努力は何だったのか。

別の道に行きたいなんて、一度も思ったことなどない。

この会社に入って、木村のようになりたいと憧れて…その結果が…―




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