たとえばあなたが
「部長は…いつか俺のことを切り捨てるつもりだったんですか」
今までかわいがってくれたのも、こういうトラブルが発生したときのための捨て駒にするためだったというのか。
「そんなわけないじゃないか…!」
木村の言葉も、今の松田には白々しく聞こえるだけだった。
無性にこみ上げてくる感情の正体が今、はっきりわかった。
怒り。
それ以外の何者でもない。
それも、この21年間でもっとも激しい怒り。
じわじわと芽生えたその感情が、自分の許容を超えているのを感じた。
手足が震え、頬が引きつる。
「高卒だって大卒だって関係ない…!俺より学歴が高くても仕事ができないヤツはたくさんいますよ」
時間帯とふたりの娘の存在を考慮して、声を抑える自制心があったことが、わずかな救いだった。
松田は、床に置いていた自分のカバンを手にして立ち上がった。
感情をコントロールできるうちに帰って、家で頭を冷やしたほうがいいと思った。