たとえばあなたが
反論しない木村に背を向けたとき、
「わかってるよ。俺だってそう思う」
と言う木村のかすれた声を聞いて、松田は振り返った。
木村は松田と視線を合わせず、だけどな、と息を吐きながら言った。
「だけど、結局は学歴社会なんだ」
「…!」
他に理由を求めていたわけではない。
けれど、何度も繰り返される学歴という言葉は松田に対する蔑みでしかなく、松田がこれまで会社へ貢献してきたことへの自尊心を打ち砕くものだった。
「…本当に、たったそれだけの理由で…俺を切るんですか。実力ではなく、学歴で…?」
「許してくれ…許してくれ、松田。会社のためなんだ」
もうダメだ、と松田は思った。
頭の中で、理性の糸が切れる音がした。
次の瞬間、松田の手がテーブル上のガラス製の灰皿に伸びていた。