この出会いが奇跡なら-上-





「桜、あんま気にしない方がいいよ。大丈夫」



あたしに気付いた愛子が、そっとそう言ってくれた。


あたしは愛子に「ありがとう」とだけ伝え、わざと見ないように心掛けた。




「いっぱいあって迷っちゃうね」


「うん、そうだね」

目の前には、ズラルと並べられた朝ごはんの定番料理。

どれもこれも凄く美味しそう。



だけど。それでも気になる目線の先。


それからの数十分後。


「おかずとった奴から席戻れよ、混雑するから」


そんな教師の言葉に大半の人が席につく。


あたしと愛子も食べれるだけ取って席に戻った。



そのたった数分後、成斗と真衣の二人もこっちへ戻ってくる。




「…………」



真衣楽しそうだなあ。

痛む胸とは裏腹に、目の前の光景に良いな。なんて思ってしまう。



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