この出会いが奇跡なら-上-
「食欲、出ない」
「ちょっと、これから自由行動だよ!?食べないでどうすんの」
「…分かってるけど」
だけど、もうつらいんだよ。
全部あたしのせいなのに。
「まあ、ちょっとは食べなよ?」
「うん」
あたしはゆっくりと箸を持った自分の腕を動かした。
でも、まだあの二人の行動は序の口で、それからもずっと、あたしの気なんて知らずに話す真衣。
まあ、真衣にはあたしも成斗が好きって伝えてないから、あたしの気なんて知らないのは、当然の事なんだけど。
「ねえ、成斗」
「何?」
「………」
……真衣も。
真衣も、成斗って呼び捨てで呼んでるの?
成斗がそう呼べって言ったのかな。
それだったらすごくつらい。
「ここ、ついてるよ」
真衣は小さく笑ってそう言うと、成斗の口元についていたご飯粒をそっと手で取ってやった。
「………っ」
それを見た瞬間、あたしの心が、きゅうっと締め付けられたような感じがした。