この出会いが奇跡なら-上-
後ろからふと掛けられた声にゆっくりと振り返ると、そこにはあの山下智樹君がこけそうになったあたしをを支えていてくれた。
「あ、ありがとう…山下君」
「いや、体が先に動いちゃって」
そう言う山下君は、小さく笑ってあたしををそっと立たせてくれた。
「成宮さん、魚は?」
「え?あー、取れなくて」
「じゃあ僕のあげるよ」
「え!いいよ、悪いし」
「2匹取ってどうしようって思ってたところだったから、大丈夫。1匹どうぞ」
不意にそう言われ、あたしのバケツに1匹魚を入れてくれた。
「ありがとう」
「ううん、じゃあ僕行くね」
「うん」
「あ、僕のこと、智樹でいいから」
「え!」
智樹君はそれだけ言うと、じゃ!と手を上げて、クラスの方へ戻って行ってしまった。
それからというもの、お昼御飯の魚を無事食べ終えて愛子がある事にひとつ気が付いた。
「そういや、成斗君いないねー」
「ああ。バスにいるんじゃない?」
「やる気ないから?」
「うん、多分だけど」
へえー、とだけ愛子が言う。
何なのなんて思いながらバスに乗り込んだ。
あたしがバスに戻ると、やっぱり成斗はバスの中で一人眠っていた。
お腹空いてないのかな。なんて思いながらじっと成斗を見つめていると、何故か担任が成斗の横にやって来て「ほら」とコンビニで買ったのか、そっとおにぎりを手渡した。
そんな担任に、成斗は相変わらず「は?」とそれだけ言葉を返す。
「春、何も食べてないだろ。今から飛行機乗るのに酔うぞ」とそれだけ言って、担任が無理やり成斗におにぎりを押しつけた。
担任もこうゆうとこあるんだって、少しだけ関心した。
それからバスに揺られ、1時間。あっという間に空港へ到着した。
そんな時、何故かブブブとメールのバイブ音が鳴った。
そんな携帯をポケットからそっと出して、届いたメールをひそかに確認する。
「…………」
……え?
『話あるから学校着いても勝手に帰んな』
メールの受信先は、ずっと気まずいまんまのあの成斗からだった。