野良ライオンと文系女の猛獣使い
「あぁ、アレは加奈子の彼氏。3人で遊んだ後、暗くなったから、加奈子を送ってその後で私も送ってくれたんだけど」

「……」

私の言葉に僅かに沈黙する兄さん。
なんとなく何を考えてるかわかってしまったから、釘を刺しておく。

「加奈子と月岡君はラブラブだから心配ないよ」

「…そうか」

それだけ言うと、兄さんは安心したように微笑んだ。

兄さんは納得してくれたようだから一件落着なように見えるけど、私には疑問が残る。

「それよりも、私はあの場に兄さんがいたことの方が驚きなんだけど。心配してくれるなら、あの時に出てきてくれれば良かったのに」

「さすがにそこまでは出来ないさ」


まぁ、間違いが起こらないかどうかちゃんと監視していたけどな、と言った兄さんの目は、全然笑ってなかった。


月岡君。今度からは私から先に送った方が良いかも。

心の中で、人の良い青年の無事を祈って、適当な所に腰を下ろした。

制服のままなんだけど、疲れてるから見逃してほしい。

「あ、お姉ちゃんおかえりー」

「あぁうん、ただいま」

で、腰を下ろした先に先客がいたのに気付く。
だらりと言う擬音が良く似合う体勢でテレビを観ている妹だ。


誰かから、気付かなかったのかよ!とかいうツッコミが入りそうだけど、本当に疲れてるから。
うん、学校だけじゃなくて、帰って一発目が兄さんだったってのにもダメージを受けてるんだから、許して。

「お兄ちゃんからの尋問は終わった?」

「尋問なんてしてないぞ」

真唯の質問に兄さんは笑って返すと、用は済んだとばかりに自身の部屋に向かっていった。

「……ま、事なきを得たって感じ?」

やけに上機嫌だった兄さんを見て、真唯は『何にもなかった』と判断したらしい。
事実、何にもなかったんだけどさ。

「まあね。兄さんの過保護は何とかならないかな……」

思わず呟いてしまったのは、兄さんが自室に消えたからだ。
さすがに面と向かっては──言った方が良いのかも知れない。


「……って、あれ?」

と、そこで真惟の向こうにもう一人いるのに気付いた。

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