野良ライオンと文系女の猛獣使い
「父さん早いね、どうしたの?」

現在は午後3時半を少し過ぎたところ。

大学生の兄さんは、授業の捕り方でこの時間に家にいることも珍しくないし、まだ小学生な真唯はいわずもがな。
だけど仕事がある父さんが、この時間に家にいるっていうのは珍しい。


その父さんは新聞を捲る手を止めて「おかえり飛鳥」なんて、今さらな挨拶をくれる。
無視する訳にもいかないから「ただいま」と返して、父さんの側に座った。

「瑛志の心配もわかる。けど父さんとしては、飛鳥に行き遅れてほしくないからなぁ」

複雑だよ、父親っていうのは。と、本当に複雑そうに笑う。
なんで家にいるのかをはぐらかされた気がして、少し不満だったけど、まぁいい。


それより、


「今から行き遅れの心配なんてしないでよ…」


それが事実、笑い事じゃないのが辛い。
だって兄さんはあんなだし、取り立てて仲の良い男子もいないし。
一番の問題は、私自身が『彼氏が欲しい!』と思ってないことかも知れないけど。


と、そこまで考えて、父さんが私の顔を見て苦笑しているのに気付く。
鏡でもあれば、さぞ微妙な顔をした私が見れた──のかも知れない。


「……飛鳥が好きになるような男なら、父さんも納得するように努力するよ」

「残念ながら、まだそういう相手はいません。……けど、ありがとう、父さん」


なんだか微妙な空気になってしまったな。
せっかく、珍しく父さんがゆっくりしてるんだから、もっとどうでもいい話題で話したいんだけど、空気が私の恋愛関係の方向に傾いてる。


……まだそういう相手もいないのに。
言ってて悲しいのは気のせいということにする。


とりあえず話題を変えたい。
悲しいことに、そういったことに向いてないのは自覚しているので、自然と傍観者に助けを求めた。
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