野良ライオンと文系女の猛獣使い
と、言っても、単に『お前も会話に参加しろ』という視線を送っただけだ。
だらしなく寝そべっている妹に。


「むー……」


呻き声のような物を上げて立ち上がった真唯は、そのまま私達の所まで歩いてくる。
微妙に不機嫌そうなのは、テレビを見るのを妨害されたせいか。
今やってた番組、私は別に面白いと思わないんだけどな。


「お姉ちゃんには、この辺がちょうどいいんじゃない?」

「?」


やってきて早々、何を言うのかこの娘は。
話題を変えるにしても脈絡がなさ過ぎる。

そう思って真唯の指差す方を見てみると、彼女の人差し指は父さんの新聞を差していた。
正確には新聞の、父さんが読んでいたのだろう『地方記事』のほぼ中心辺り。
もっと言うと、はにかんだ青年と仏頂面の青年のモノクロ写真。


「これが何よ?」


直前に何を言われたのかなんて覚えちゃいない。
というか、『話題を変えて』と思ってる私にとって、過去の話の流れより、大事なのは今なのだ。
英語で言うとnowってやつ。
脈絡云々言ってたのは忘れてくれると嬉しい。

まぁらしくないボケは置いとく。
本来私はツッコミ属性らしいし。そう言った親友には、あんたのせいだと盛大なツッコミを入れてやりたい。
ツッコミの泥沼化してる気がするけど。

で、思考の海に落ちかけた私を引き戻したのは、疑問に対する真唯の回答。


「うん?だからお姉ちゃんの彼氏。この辺りならアタシも納得かな、と思う」


相変わらず新聞を指差しながら、話題を変えるという使命を託した妹様は、笑顔でシレッと爆弾を投下して下さった。

いやまあ、明確に『話題を変えて』とお願いした訳じゃないから文句も言えないんだけどさ。
笑顔で、というよりニヤニヤ顔の真唯はわかってて爆弾を投下したとしか思えない。
というか、絶対そうだろ。

いつまでもこの空気を引きずるのは、私の精神衛生上、非常に良くない。

良くないので、適当に相づち打って、さっさと切り上げよう。それがいい、そうしよう。
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