野良ライオンと文系女の猛獣使い
そろそろこの話題を打ち切りたいなぁ。
私相手にこの手の話題は、無駄骨だって気付いてるハズなんだけど。


「あ!もしかして」

「何?」

「会話してみて感性が合う相手って……」

「うん?」

「……私?」


なんてほざいて、加奈子は恥じらうようなポーズを取って見せた。
そのまま、「うふっ」と語尾にハートマークでも付きそうな笑顔を振りまく。


「……友達だとは思ってるわよ。そういう意味では感性が合うから」

「いやーん。狙われてる?」

「話を聞け!友達だって言ってんでしょ!?」


完全に遊ばれてることを自覚しつつ、ついつい怒鳴ってしまう。

往来でこのやり取りなら、周囲の目が恥ずかしくて死ねるだろうが、幸か不幸か『ここ』は大声を上げても問題ない場所だった。
自然、加奈子の悪ノリもエスカレートする。


「ユリユリ?ダメよ私には月岡君が!」

「知ってるから!末永く幸せになれ!私は友達で良いわよ!」

「でもでも、あざとちゃんがアタシの嫁になるなら……月岡君、ごめんね」

「ごめんねじゃねぇぇえええ!?」


親友カップルのプチ破局の危機に思わず絶叫する。
いや、冗談だってのは重々承知の上よ?

で、この話題を突然打ち切るように加奈子が、


「それにしても」


と口にする。


「そろそろ始まっていいんじゃない?」

「……今、何時?」

「開演予定を3分過ぎた。あーあー、早く聴きたいよー、スーパーファング」


加奈子が口にした『スーパーファング』というのは、アマチュアバンドの名前。

これで私達がいる場所は、なんとなく想像してもらえると思う。
大声上げても大丈夫な場所で、アマチュアバンドを聴ける場所なんて、まぁいくつもはない。

俗に言うライブハウスって所。


「その前に、タイアップ……もとい前座入るって言ってなかったっけ?」
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