野良ライオンと文系女の猛獣使い
橋を渡り始めてしばらくすると、前方から早朝ランニングをしているのであろう男性が走り寄ってくる。
このまま行くと、丁度橋の真ん中辺りですれ違う。
私は意を決して、ランナーに声をかけた。
「おはようございます」
おそらく挨拶は返ってこないだろう。
予想というより確信に近い。
散歩を始めた日からずっとすれ違っているけど、ランナーは一度たりとも挨拶を返してくれたことはないから。
というか、そもそも気付いているかも怪しい。
ランナーの顔は、常に正面を向いているし(サングラスのせいで表情は読めないけど)、耳にはイヤホン。
すれ違うたびに、音漏れしているのを聴くから、こっちの声は届いていないに違いない。
なのに、
「……!」
すれ違いざま、ランナーが右手を挙げた。
彼はそのまま一言も発せずに通り過ぎて行ってしまったけど、私はしばらく呆けてしまった。
今のは、紛れもなく、挨拶だ。
今まで無視され続けた相手からの、初めてのリアクション。
ただの挨拶だっていうのに、それが少しだけ嬉しかった。
それに、あの人が聴いてた曲。
「アメイジング・グレイス……」
このまま行くと、丁度橋の真ん中辺りですれ違う。
私は意を決して、ランナーに声をかけた。
「おはようございます」
おそらく挨拶は返ってこないだろう。
予想というより確信に近い。
散歩を始めた日からずっとすれ違っているけど、ランナーは一度たりとも挨拶を返してくれたことはないから。
というか、そもそも気付いているかも怪しい。
ランナーの顔は、常に正面を向いているし(サングラスのせいで表情は読めないけど)、耳にはイヤホン。
すれ違うたびに、音漏れしているのを聴くから、こっちの声は届いていないに違いない。
なのに、
「……!」
すれ違いざま、ランナーが右手を挙げた。
彼はそのまま一言も発せずに通り過ぎて行ってしまったけど、私はしばらく呆けてしまった。
今のは、紛れもなく、挨拶だ。
今まで無視され続けた相手からの、初めてのリアクション。
ただの挨拶だっていうのに、それが少しだけ嬉しかった。
それに、あの人が聴いてた曲。
「アメイジング・グレイス……」