野良ライオンと文系女の猛獣使い
「それで?柄にもなく、ときめいちゃったんだ?」

「何それ、ときめいてないし」

「だって、挨拶返されたくらいで嬉しかったんでしょ?」

「……それは、そうだけど」


やっぱりときめいてる、なんて笑う加奈子に、一発ぶち込んでやりたくなる。

あれは、ときめくとかじゃなくて、単純に『誠意は通じる』事がわかって嬉しかっただけだ。
そう、何度も説明してるんだけど。


「そんな事言ったって、その衝撃で、私に見せるハズの宿題忘れてきちゃったんだもんねー」

「それは寝起きでシャンとしてなかったから。うっかりしてました、ごめんなさい」

「いやぁ、そのお陰であざとちゃんの恋バナ聞けたし良いんだけどさー」

「だから、恋とかじゃなくて……」

「ねえねえ、どんな感じの人?あざとちゃんがときめくくらいだから、やっぱり顔はカッコいいんだろうなー。歳はいくつくらい?話しはした?」


……聞いちゃいねえし。


「毎朝、すれ違うだけだからまともに観察なんてしてないし、挨拶しただけで話しなんてしてないよ」

「そっかぁ……。あ!でもでも、そこから始まる恋!いいなぁ、きっかけはただの挨拶だった、みたいなー」


ホント、この娘の思考はどうなってるんだろう?

やたら嬉しそうに話しているけど、前提条件がおかしい。


「だから、あり得ないって」

「あり得ないなんて分かんないじゃん。挨拶から始まって、段々仲良くなれるかも知れないし」

「いや、仲良くなる必要が……」


別に好きな相手という訳でもないのに、この話の展開はなんだろう。

まるで私が、あのランナーに片想いしているみたいだ。
してないけど。


そんな私の思いなんてお構い無しに、話は進む。


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