野良ライオンと文系女の猛獣使い
「次に会ったら、『今日もいい天気ですね』くらい言って、少しずつ距離をね」

「あのさ、君、人の話、聞いてないでしょ?」

「大丈夫!あざとちゃんは可愛いから、無視されるってことはないよ」

「いや、現在絶賛スルーされてるんだが」

「でも、天気くらいじゃちょっと話題としては弱いなー……。なんかさ、相手の事で知ってる事はないの?」

「だから、すれ違ってるだけで大したことは知らないし。せいぜい、音楽聴きながら走ってるとか、それがアメイジング・グレイスだとか」

「うわぁ、観察してないとか言いながら、しっかり観察してるじゃん!」

「……なんでこれにだけ反応するかな」


やたら嬉しそうな彼女には悪いが、別に観察してた訳じゃない。
ただ、イヤホンから音漏れしているのが、偶々私の好きな曲だった、それだけだ。


「大体、さっきから言ってるけど、私、あの人のこと、好きとかじゃないから」

「えー、つまんなーい」

「つまんないって……」


加奈子に悪気が無いのは知っている。
けど、ちょっと疲れる。


「あー、でもそっか。お兄さんがいるし、結局お付き合いまでいかないもんね。残念」

「兄さんはあんまり関係ないけど……」


兄は、まぁその、いわゆる、『シスコン』なんだと思う。
良い兄なんだけど、ちょっと過保護というか、なんというか。


目の前の友達しかり、ちょっと過干渉。
いや、本人達には悪気がないからどうにも出来ないんだけど。

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