境界上
.


ムカムカする。気分が悪い。


この3年、そんなチープな“ぬるま湯”で満足してた自分が有り得ない。

何より、こうまでされなきゃ気付けなかった自分の浅はかさが許せない。



「ねぇ、隣いい?」


「あっち行って」


「えっ?」


いつもなら、ナンパされればとりあえず始まる男の品定めも。

今日は笑顔どころか視線も向けない。


手早く追い払う為に最低限の意思表示だけを示す。

(本音を言うなら口を利くことすら億劫なのだが。)


「えっと……」


「マスター、同じの」


一瞥もくれずアルコールのみを注文する無愛想な女に、遂にはこのナンパ男もすんなり諦めて去っていく。



あ―。何もかもクソだわ。

こんなクソ面白くないのも久しぶりね―――……。









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