大空の唄
「蒼空は、今自分が孤独だと思う?」
テレビの液晶をぼーっと眺めながらそう言う
きっと蒼空も目を合わせてくれないから
直接見ていないから分からないけど蒼空が顔をしかめたように見えた
「俺は孤独なんだ、これまでも、これからも…」
“孤独な存在でなければならない”当たり前とでも言いたげに呟かれたその言葉には、強い意志と深い悲しさとが隠れているのだろう
「そっか。蒼空のその思いは否定しない」
だってソレは蒼空が長い長い苦しみの中でずっと感じてきた思いだから、突然現れたあたしが一言で否定できるような簡単な思いじゃないことぐらい分かっている
「だからこれはあくまであたしの考えとして聞いて」
私はまっすぐと蒼空の方に顔を向きなおした
蒼空が私を見てくれなくても
「孤独でいなきゃいけない人なんていない」
そういうと、蒼空はあたしの方を見てくれた
その瞳は睨み付けるようなそんな瞳だったけれど
自然と恐怖は感じなかった
「蒼空のそばにもきっとたくさんの人がいて
そこにはたくさんの愛情がある」
もしかしたらもう蒼空だって気付いているかもしれない
「翔、陽、梨華さん、そしてあたしも…
蒼空が大好きだから、蒼空の傍にいるんだよ
それは歌手としての空ではなく“蒼空”という
ひとりの人間として…」
蒼空があの少年だと知らなくても
あたしは同じように蒼空を好きになった
それはきっと蒼空の持つ不思議な魅力がそうさせたんだと思う